大倉崇裕 著「白虹」。
「聖域」に続き同著者の山岳ミステリを読了。

元警察官で現在は山小屋で働く男が主人公です。
夏季の登山シーズンは山小屋、オフシーズンは警備員という働き方です。
安定した仕事とは言えません。
条件は良くないのに、仕事の責任は重い。
開業準備は特に大変で水を引きに行ったり、ヘリの到着場所を整備したり。
悪天候時には付近の様子を見に行ったりもします。
そんな山小屋で働く現実がリアルに感じられました。
作品中には多くの山が現れます。舞台となる山小屋は「神凪沢小屋」。
北アルプスの真ん中に位置し、2413mの神代岳が望めます。
また叶山、犬養岳の出発点であり、3000m級の山である蒲生山、桜井岳へ通じています。
また事件の起きる山に群馬県の長沢山というのも出てきます。
お手軽登山の山として陣頭山という山も。
これらすべての山は架空のもののようです。
「聖域」で慣れたので、また架空の山なんだろうと読み進めましたが、北アルプスや群馬県などは実在している訳でやっぱりちょっと混乱してしまいます。
一つだけピンときた陣頭山は陣馬山の事でしょうかね?
ミステリ部分についてですが、ちょっと残念でした。
犯人の人物像に違和感が残ってしまったのです。
ミステリにおいてトリックよりも動機や心理描写に納得いかないとつまらないと思ってしまう性質なのです。
トリックの解明に山が関連しているのはさすがでした。
同じ場所からの同じ景色と思っても実は日々一刻と変化する自然。
犯罪が自然によって暴かれる事に痛快さと脅威を感じました。
タイトルでもある白虹。
白い虹ではなくて太陽や月の周りに白い円の光が見える現象のことです。
めずらしい現象のようですが、いつか見られるかもしれません。
頭の片隅に覚えておこうと思いました。
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