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「聖職の碑」新田次郎 著



大正時代に実際に起きた遭難を元にした小説です。
小学生の就学旅行で生徒と教師を含め11名が死亡するという
大変悲惨なものでした。

著者の綿密な取材に基づいて書かれた作品であり、
物語の後には取材記も収録されています。
なるほど、この詳細な遭難の描写はこれ程の取材の上に成り立っていたのかと
著者のこの作品を描くにあたっての真摯な姿勢がわかります。

当時は予測不可能であった天気の急変。
山頂にあるはずの山小屋が無いという最悪の状況。
暴風雨の中冷静さを失い我先にとの下山。
そんな中でも最後まで生徒を守るために尽力した先生方と
必死に歩く子供たちの姿に涙しながら読みました。

整備された登山道、高性能の山道具、立派な山小屋。
恵まれた環境で登山できる私たちだからこそ
無茶をしてはいけないと強く感じました。

題名にもなっている「碑」は遭難記念碑。
遭難者を悼むのではなく、遭難そのものを忘れない為に記念碑となりました。
今も修学旅行登山は万全の体制の元、続いているそうです。

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「富士山頂」新田次郎

富士山頂に気象レーダーを建設する。
昭和38年に始動した気象庁の一大事業を追った物語です。

不勉強で富士山頂に気象レーダーがあった事など全く知りませんでした。
一度は登った富士山だけに、あの山頂に!?
という思いとともに深く感動しました。



気象レーダーを作る予算案の交渉シーンから始まり、完成、運用に至るまでの様子を実にリアルに描いています。
工程によって三章からなる構成です。

第一章は事業をどこにまかせるか、企業間の熾烈な争い。
依頼する企業を決めるのも事業の一環であるという事は意外と盲点でした。
本当に最後までやり遂げる力のある企業かどうかの見極め。
実は事業を成功させる上で実は最も大切なことかもしれません。

気象庁は時にシビアな対応で、ここならばと公正に最良の企業を選びます。
このような気持ちで常に国が予算を使ってくれたらなと思いました。

第二章では2年にわたる実際の工事の様子。
作中で度々言われるのは現場が富士山頂であるが故の問題。
冬場の作業はほとんど無理であり、夏場でも晴天の日は限られる。

何にせよ、3776mの高さです。
材料を運ぶのも大変ですし、作業員だって登らないといけません。
やっと登って作業に当たっても、大変さに根を上げて下山してしまう工夫が後を絶ちません。
頑張ってやりきる工夫の心の支えは富士山で働いているという気持ちだけ。

最終工程であるレーダードームを被せるシーンはジーンとしました。
山頂に輝く十六面体のドームはさぞ美しい事でしょう。

第三章では運用に至るまでの諸問題。
完成してもなお終わりでないこの事業。
電波検査というものが必要なんですね。
検査するにも検査員も登っていかないといけません。

何をするにも人が登って作業をする。
昭和初期から山頂に観測所はあって、常に作業員が駐在していたことにも驚きました。
レジャーで登った自分とは違って通勤の為に登る。
とても大変と思うと同時に少し羨ましくもあります。
日本一の山の山頂で働いたという誇りは誰でもが得られるものではありません。

富士山頂の気象レーダー、今はどうしているか調べてみました。
富士山レーダードーム館として第二の人生を歩んでいるようです。
35年間、富士山頂で頑張って日本の気象情報を支えてくれていました。
気象衛星の活躍によりその役目を終えたのです。
ちょっぴり寂しくもあります。

この小説は映画化もされ、この工事の様子はNHKプロジェクトXでも紹介されていたようです。
こちらもチェックしようと思います。

  

「ヤマノススメ」飯能舞台の女子高生登山漫画

アニメ化もされた登山漫画「ヤマノススメ」。
気にはなっていたのですが、可愛らしい絵柄の漫画が苦手で読まず嫌いでした。
Kindle版で期間限定100円の時に購入して読んでみました。



登山なんて全く興味がないという女子高生のあおい。
昔の友人ひなたとの再会をきっかけに、少しずつ山の魅力に気づいていく。
ざっくり紹介するとそんなお話でした。

初心者から徐々にレベルアップしていく様子が自分と重なります。
ドラマチックな展開がないのが逆に新鮮で結構面白く読めました。

初めての山道具屋に戸惑い、欲しいリュックは予算オーバー。
高尾山登山ではペース配分が上手くできずにバテちゃって。
そんなこんなに共感します。

あおいとひなたが二人で初めて登る山は天覧山。
自分も登った山の登場がちょっと嬉しいです。
大して登ってないのに良い眺めとのあおいの感想に同感です。



天覧山登山の記事はコチラ
「天覧山」駅から徒歩でお手軽登山

山道具屋ではバリバリ登山女子の先輩に出会います。
スタイル抜群眼鏡女子の楓さん。
高校生で女一匹シュラフ担いで夏山を縦走。

高尾山では年下の森ガールに出会います。
動物好きで、一人で高尾山に来る行動派の中二女子ここなちゃん。
そんな風に出会わないって!とそこはちょっと思いますが(笑)

今はダメダメな主人公あおい、積極的な友達ひなた、頼れる先輩楓さん、妹的存在にここなちゃん。
登場人物のバランスは良いようです。
これから四人で様々な山を目指していくのでしょう。



天覧山近くのコンビニにはひなたとここなちゃんがいました。
完成度は微妙ですが、手作り感に作品に対する愛を感じます。

アニメの方も機会があれば見てみようかな、と思いました。

 

「白虹」大倉崇裕 著 

大倉崇裕 著「白虹」。
「聖域」に続き同著者の山岳ミステリを読了。



元警察官で現在は山小屋で働く男が主人公です。
夏季の登山シーズンは山小屋、オフシーズンは警備員という働き方です。
安定した仕事とは言えません。

条件は良くないのに、仕事の責任は重い。
開業準備は特に大変で水を引きに行ったり、ヘリの到着場所を整備したり。
悪天候時には付近の様子を見に行ったりもします。
そんな山小屋で働く現実がリアルに感じられました。

作品中には多くの山が現れます。舞台となる山小屋は「神凪沢小屋」。
北アルプスの真ん中に位置し、2413mの神代岳が望めます。
また叶山、犬養岳の出発点であり、3000m級の山である蒲生山、桜井岳へ通じています。

また事件の起きる山に群馬県の長沢山というのも出てきます。
お手軽登山の山として陣頭山という山も。

これらすべての山は架空のもののようです。
「聖域」で慣れたので、また架空の山なんだろうと読み進めましたが、北アルプスや群馬県などは実在している訳でやっぱりちょっと混乱してしまいます。
一つだけピンときた陣頭山は陣馬山の事でしょうかね?

ミステリ部分についてですが、ちょっと残念でした。
犯人の人物像に違和感が残ってしまったのです。
ミステリにおいてトリックよりも動機や心理描写に納得いかないとつまらないと思ってしまう性質なのです。

トリックの解明に山が関連しているのはさすがでした。
同じ場所からの同じ景色と思っても実は日々一刻と変化する自然。
犯罪が自然によって暴かれる事に痛快さと脅威を感じました。

タイトルでもある白虹。
白い虹ではなくて太陽や月の周りに白い円の光が見える現象のことです。
めずらしい現象のようですが、いつか見られるかもしれません。
頭の片隅に覚えておこうと思いました。

 

「ひとり登山へ、ようこそ!」 



最近注目している、鈴木みきさんのコミックエッセイ、
「ひとり登山へ、ようこそ!」を読みました。

自分は果たして一人登山に向いているのか?
「ひとり登山度」の診断チャートでは、一問めで100%になりました。
スタートが富士登山ツアーに一人参加なので、当然の結果ですね。

そんなひとり登山度100%の自分ですが、最近は山仲間とのグループ登山が多いです。
皆でわいわい話しながら登るのはとても楽しいものです。
同じ景色を見ていても感じ方は人それぞれ、自分では気づけなかった発見もできます。

では一人の良さとは何でしょう?
自分のペースで歩けるし、仲間に気を遣わずにも済みます。
気を遣うというよりも、気を遣われてると気にしなくて済むという感じなのですが。
ペースが遅い方なので、待たせていると思うと焦ってしまったりします。

皆で登る安心感は無い代わりに、コースを確認しながら進む楽しさがあります。
一人で頑張って山頂についたと思うと、皆で登ったよりも充実感が感じられます。
そんな皆で登る良さと一人で登る良さに改めて気づかせてくれる内容です。

一人もいいけど皆もいい、これは山に限らずですね。

例えば自分はお酒が好きですが、一人で家で飲むのも、皆でワイワイ飲むのも、誰かとサシで飲むのも全部好きです。
映画だって一人で観て余韻に浸る良さ、誰かと観てすぐに感想を共有できる良さがあります。
きっと普段から一人の楽しみ方を知っている人は山でも一人で楽しめるのでしょうね。

一人登山の注意点も色々教えてくれています。
登山届や無理のないプランにするなどの基本的な事は当然な事としてフムフムと。
それよりも注目したのが「こんなひとり登山者はイヤです」。
いるいる、こんな人という描写に思わずクスッ。
自分もそんな一人登山者にならないように気を付けたいものです。

最後の章には著者が仕事に対して悩んだ時期のことが描かれています。
大好きな山に仕事で行けるなんてうらやましい!
自分ももっと早く山の魅力に気づいていたら読者モデルになれたかも…。
なんてうらやましいばかり思っていたのですが、そう簡単でもないようです。

趣味を仕事にすると趣味がなくなってしまう、と誰かに言われた事があります。
好きなことを仕事にしたはずなのに、なんだか空しいと思った経験が自分にもあり、とても共感しました。
それでも、そんな自分を救ってくれたのも山だったという素敵なエピソードです。

この本を読んだらひとり登山がしたくなりました!

プロフィール

HN:
ichiko
性別:
女性
自己紹介:
40歳で挑戦した富士登山をきっかけに登山が趣味になりました。関東近郊の低山を中心に楽しんでいます。

初心者、女性、40代の目線で綴る山行き。渓谷歩きや丘陵など自然に触れるハイキング。山道具・山ファッション・下山後の温泉・山でいただく御朱印などなど。山から広がった様々な趣味や日々の雑感も。


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