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大倉崇裕 著「聖域」。
がっつり山が舞台の山岳ミステリです。
元々ミステリ好きですが、山岳ミステリというジャンルを新発見。
学生時代登山愛好家だったという著者、山での描写が丁寧です。
例えばコッヘルに雪を溶かしてお湯を作る場面は、
冬山経験の無い自分にもありありと目に浮かんできます。
使い込まれた登山道具の描写やザックは何リットルであるかなど
細かい描写が物語をリアルにしているように感じました。
本書のキーポイントとなる山は塩尻岳。
ここで起きたある人物の死の謎を解いていくというストーリーなので、
何度も場面に出てきます。
八ヶ岳中央に位置し、標高は2800m、特徴的な四角錐のピーク。
登山口周辺は草原地帯で山頂付近は切り立った断崖。
なんとも魅力的に描かれたこの山。
冬山は無理でも夏であればいつか登れるかしら。
などと夢想しつつ読了後に調べてみると架空の山である事が判明。
他にも架空の山がいくつか登場しますが、
どれも実在する山だと思って読んでいました(^_^;)
塩尻岳が見えるという、標高2500mの長野と山梨の県境に立つ両神岳。
塩尻岳と同じ八ヶ岳に立つ、麓に桐生池をたたえる標高1725mの桐生山。
いずれもこれまた魅力的に登りたくなるように描かれています。
山に詳しい方であればこの辺の位置にこんな名前の山は無い、
とすぐ気づくのでしょうね。
八ヶ岳は実在するので、モデルとなった山はあるのかもしれません。
作中に主要人物ではないのに、一際強い印象を残す登場人物がいます。
過去に8000mを踏んだという四十年配の女性。
町中で会っても山屋独特の雰囲気をまとっているといいます。
今からこの方のようにはなれないでしょうが、とても憧れてしまいました。
山の描写ばかりに触れましたがミステリとしてもちゃんと面白いのでご安心を。
大倉崇裕さんの代表作にドラマ化もされた福家警部補シリーズがあります。
コロンボ式の初めに犯罪が描かれる倒叙式ミステリ。
シリアスな「聖域」と違いコミカルタッチも混じるこちらも面白いです。